「探偵業の業務の適正化に関する法律」について

「探偵業の業務の適正化に関する法律」は、2007年6月1日に施行された探偵業に関係する日本の法律です。第1条から第20条により探偵業の業務適正化を目的に立法化されました。2019年12月14日には探偵業の業務の適正化に関する法律の一部改正が行われています。大阪府警察ホームページによると「探偵業は、個人情報に密接にかかわる業務であるが、何らの法的規制がなされず、調査の対象者の秘密を利用した恐喝事件、違法な手段による調査、料金トラブル等の問題が指摘されてきた」とあり、過去に悪質な業者も一定数存在していたことは明らかで、これに対処すべく制定されました。以下は第1条から第二十条迄をわかりやすく紹介したものですが、比較的新しい法律なので原文においても特に難しい表現は無く、そのまま読まれてもわかりやすいかと思います。

 
 

第1条(目的)

探偵業は過去に「知り得た秘密を利用した恐喝」「違法な手段による調査」「料金トラブル」等の問題があったことから「必要な規制を定め」「業務の運営の適正を図り」「個人の権利利益の保護に資する」を目的として制定されたとあり、立法化の経緯が示されています。


第2条(定義)

探偵業務とは「他人の依頼を受けて」「特定人の所在又は行動について」の情報を「聞込み」「尾行」「張込み」等の手法を用いて実地の調査を行い「調査結果を当該依頼者に報告」する業務と定義されています。これによって探偵業を営む者は都道府県公安委員会に届出書を提出しなければなりません。ここでいう「特定人」の「人」とは個人や法人が含まれ「特定」の程度は必ずしも住所・氏名が明らかである必要はなく対象者を具体的に絞り込む程度とされています。

次のような業務は自己本来の業務であることから探偵業務に該当しません。

〇作家、著述家、フリージャーナリスト、インターネット・メディア等が自らの報道、著作等の用に供する的で行う取材活動等

〇学者、研究者等が自らの学術調査活動の一環として行う調査等の活動

〇弁護士、公認会計士、税理士又は弁理士が自ら受任した事務を行うため必要な活動

〇放送機関、新聞社、通信社その他の報道機関の依頼 を受けて、その報道の用に供する目的で行われるもの

放送機関、新聞社、通信社その他の報道機関の依頼 を受けて行う業務を「専業」としているものは「報道の自由」を尊重する観点から探偵業としての規制から除かれますが、前記以外からの依頼も受けている場合は除外されません。

次のような業務は対象者の個性を前提にしたものではなく、特定人とはいえないことから探偵業務に該当しません。

〇アンケート調査

〇研究機関が行う世論調査

第2条の条文における「聞込み」「尾行」「張込み」「その他これらに類する方法」とは、「実地の調査」の手法であり、現場に赴いて実施される調査(実地の調査)をさしています。例を挙げると、「秘匿性のあるカメラの設置とその記録内容の解析」「電話による問合せ」「インターネットを利用した情報検索」等による業務は「実地の調査」には当たらないことから探偵業務には該当しません。更に「調査の結果を当該依頼者に報告する業務」とは「依頼を受けて~実地の調査」が一体となった業務となるため、実地の調査により個人の情報を広く収集し、データベースを構築し、依頼に応じてデータを提供する業務は探偵業務には該当しません。


第3条(欠格事由)

「次の各号のいずれかに該当する者は、探偵業を営んではならない」とあります。
①破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
②禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は
執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しない者
③最近五年間に第15条の規定による処分に違反した者(営業の停止等の行政処分を指します)
④暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第二条第六号に規定する
力団員(以下「暴力団員」という。)又は暴力団員でなくなった日から五年を経過しない者
⑤心身の故障により探偵業務を適正に行うことができない者として内閣府令で定めるもの
⑥営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者でその法定代理人が前各号又は次号のいずれかに該
するもの
⑦法人でその役員のうちに第一号から第五号までのいずれかに該当する者があるもの


第4条(探偵業の届出)

探偵業の届出に関する条文です。探偵業者は都道府県公安委員会に届出書を提出しなければまりません、提出先は当該営業所の所在地を管轄する警察署(生活安全課)を経由して行うことになっています。届出書には商号、名称又は氏名及び住所の他、広告宣伝に使用する名称を記載し、定めのある書類を添付することによって「探偵業届出証明書」が交付されます。


第5条(名義貸しの禁止)

探偵業者の名義貸しを禁止しています。また届出をした者が探偵業を営みながら、他人に名義を貸した場合も本条違反が成立します。

第6条(探偵業務の実施の原則)

条文を引用すると「探偵業務を行うに当たっては、この法律により他の法令において禁止又は制限されている行為を行うことができることとなるものではない」とあり、特別な権限が付与されるわけでは無いと記されています。「刑法」上の犯罪行為や個人データを第三者に提供する行為等の「個人情報保護法」「住民基本台帳法」において制限されている住民基本台帳の閲覧等、様々な法令において禁止されている行為がありますが、探偵業務を行うに当たっては法令を遵守しなければなりません。更に「人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならない」とあり、刑事上の違法な行為や民法上の不法行為が含まれます。


第7条(書面の交付を受ける義務)

調査結果を「犯罪行為」「違法な差別的取扱い」「その他の違法な行為」に利用しない旨を、当該依頼者から書面で交付を受なければならないと記されており、上記の内容に利用しない旨の誓約書等を作成することになります。「犯罪行為」とは、刑法に限らず刑罰法令に違反する行為であり「DV防止法」(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)の保護命令に違反する行為等も該当します。「違法な差別的取扱い」とは、例えば「労働基準法」において禁止されている労働条件の差別的取扱い等があげられるようです。「その他の違法な行為」とは、刑事又は民事の別を問わず、違法と評価されるすべての行為をさします。


第8条(重要事項の説明等)

探偵業者は業務に関する重要事項を当該依頼者に対し説明のうえ書面(契約前書面)を交付し、次の各号を表記しなければならないとあります。
①探偵業者の商号、名称又は氏名及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
②第四条第三項の書面に記載されている事項(商号、名称又は氏名及び住所、広告宣伝に使用する名称)
③探偵業務を行うに当たっては、個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)その他の法
を遵守するものであること。
④第10条に規定する事項(後述する「
秘密の保持等」を指します)
⑤提供することができる探偵業務の内容
⑥探偵業務の委託に関する事項
⑦探偵業務の対価その他の当該探偵業務の依頼者が支払わなければならない金銭の概算額及び支払時期
⑧契約の解除に関する事項
⑨探偵業務に関して作成し、又は取得した資料の処分に関する事項

更に、契約を締結したときには「遅滞なく次に掲げる事項について当該契約の内容を明らかにする書面を当該依頼者に交付しなければならない」(契約後書面)とあり、一書面でなくとも契約書、調査計画書、パンフレット等複数の書面でも差し支えないようです。


①探偵業者の商号、名称又は氏名及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
②探偵業務を行う契約の締結を担当した者の氏名及び契約年月日
③探偵業務に係る調査の内容、期間及び方法
④探偵業務に係る調査の結果の報告の方法及び期限
⑤探偵業務の委託に関する定めがあるときは、その内容
⑥探偵業務の対価その他の当該探偵業務の依頼者が支払わなければならない金銭の額並びにその支払の時
及び方法
⑦契約の解除に関する定めがあるときは、その内容
⑧探偵業務に関して作成し、又は取得した資料の処分に関する定めがあるときは、その内容


第9条(探偵業務の実施に関する規制)

1項には、探偵業者は調査結果が「犯罪行為」「違法な差別的取扱い」「その他の違法な行為」に利用されることを知ったときには、探偵業務を行ってはならないとあり、従業者の報告等を通じて知った場合や、違法行為に用いられることを確定的に認識した場合、また、そのような可能性があることを認識し、そのように用いられても構わないと容認することも「知ったとき」に該当する。2項には「探偵業務」を「探偵業者」以外の者に委託してはならないとあり「探偵業務」の全部または一部を「探偵業者」以外の者に「委託」することはできません。例えば探偵業者が聞込みを行う過程で第三者に情報提供を依頼することや、調査の過程で取得した写真の現像を第三者に依頼すること等は「探偵業務」の委託には当たりません。

第10条(秘密の保持等)

探偵業者は「正当な理由がなく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない」「業務に従事する者でなくなった後においても、同様とする」「業務に関して作成し、又は取得した文書、写真その他の資料(電磁的記録を含む)について、その不正又は不当な利用を防止するため必要な措置をとらなければならない」とあり、資料(電磁的記録を含む)の保管方法、資料を取り扱うことのできる者の範囲、資料の持ち出しの手続、資料を複写する場合の手続、廃棄方法、情報セキュリティの確保等の点において適正に管理されている必要があります。また、その実効性を担保するため、必要な規程の整備や物的措置(例:鍵のかか る保管庫、セキュリティ措置が講じられているパソコン等)が講じられている必要 もあります。

第11条(教育)

条文を引用すると「探偵業者は、使用人その他従業者に対し、探偵業務を適正に実施させるため、必要な教育を行わなければならない」と記載されています。「使用人その他の従業者」とは、探偵業者の下で業務に従事する者とされ、雇用関係の有無は問われていません。「必要な教育」には、法や個人情報保護法を始めとする関係法令の知識、適正な探偵業務の実施方法、業務に関する資料及び情報の適正な取扱い方法等についての教育 が含まれ、同教育の履行を担保するため、教育計画書及び教育実施記録簿を作成するよう指示されています。


第12条(名簿の備付け等)

探偵業者は使用人や従業者の名簿を作成し「探偵業届出証明書」を営業所の見やすい場所に掲示しなければならないとあり、各従業者の行う業務の具体的内容についても記載するように指示されています。
 

第13条(報告及び立入検査)

条文を引用すると「公安委員会は、この法律の施行に必要な限度において、探偵業者に対し、その業務の状況に関し報告若しくは資料の提出を求め、又は警察職員に探偵業者の営業所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる」とあり。これにより毎年一度ほど当該営業所の所在地を管轄する警察署(生活安全課)生活安全課より問合せ又は立入検査があり、探偵業者は業務の状況若しくは帳簿、書類等が検査され、関係者に対する質問等が行われます。

第14条(指示)
本条と次の第15条は「行政処分」の内容を示しています。

探偵業者等が「この法律又は探偵業務に関し他の法令の規定に違反した場合」において「探偵業の業務の適正な運営が害されるおそれがあると認められる」ときは、当該探偵業者に対し「必要な措置をとるべきことを指示することができる」とあり、探偵業者等の営業所を管轄する公安委員会が行うことになっています。

第十五条(営業の停止等)
営業停止命令は、探偵業者等が法令違反行為をした場合において「探偵業の業務の適正な運営が著しく害されるおそれがある」と認められるとき、又は「法第14条の 規定による指示に違反したとき」に行われ、指示と同じく探偵業者等の営業所を管轄する公安委員会が行うことになっています。

第2項には「第3条各号(欠格事由)のいずれかに該当する者」が探偵業を営んでいるときは、その者に対し「営業の廃止」を命じることができます。これは管轄区域内にその営業所が所在しているか否かを問わず「営業の廃止」の命令が行え、探偵業の届出の有無も問いません。

第16条(方面公安委員会への権限の委任)
条文を引用すると「道公安委員会の権限に属する事務は」「方面公安委員会が行うこととされている」となっています。これは北海道公安委員会には方面公安委員会が設置されており、函館、旭川、釧路、北見の4方面が、
それぞれの方面を管理していることから権限の委任が必要になっています。


第17条(罰則)
第15条(営業の停止等)の規定による処分に違反した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。


第18条(罰則)

次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
①第4条第1項(探偵業の届出)の規定による届出をしないで探偵業を営んだ者
②第5条(名義貸しの禁止)の規定に違反して他人に探偵業を営ませた者
③第14条(指示)の規定による指示に違反した者


第19条(罰則)

次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
①第4条第1項の届出書又は添付書類に虚偽の記載をして提出した者
②第4条第2項の規定に違反して届出書若しくは添付書類を提出せず、又は同項の届出書若しくは添付書類に虚偽の記載をして提出した者
③第8条第1項(探偵業の届出)若しくは第2項の規定に違反して書面を交付せず、又はこれらの規定に規定する事項を記載しない書面若しくは虚偽の記載のある書面を交付した者
④第12条第1項(名簿の備付け等)に規定する名簿を備え付けず、又はこれに必要な事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をした者
⑤第13条第1項(報告及び立入検査)の規定に違反して報告をせず、若しくは資料の提出をせず、若しくは同項の報告若しくは資料の提出について虚偽の報告をし、若しくは虚偽の資料を提出した者又は同項の規定による立入検査を拒
み、妨げ、若しくは忌避した者


第20条(罰則)

法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前3条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。